江戸時代の銭湯文化について 独特の文化を紹介!

江戸時代の銭湯文化について 独特の文化を紹介!

江戸っ子は銭湯が大好き、というのは今でも言われることですが、江戸時代の銭湯は民衆にとってどんな場所だったのでしょうか?

実は銭湯は、公共スペースとしてマナーが重視される一方、娯楽や社交も兼ねる場所として知られていました。

このコラムでは、江戸時代の銭湯事情をマナーやサービス内容などの側面から、わかりやすく解説していきます。

世界有数の人口を誇る江戸の銭湯文化を解説!

1800年代の江戸は世界トップクラスの都市だった?

徳川家康が江戸幕府を開いた1600年代前半にはわずか15万人程度だった江戸は、1800年代になると100万人を超えるほど人口が集中する場所に発展しています。同じ頃のヨーロッパに目を向けると、ロンドンの人口は90万人、パリでは60万人ですから、世界でも有数の巨大都市と言えます。

これほど人口が密集すると、さまざまなマナーや習慣が生まれるのも当然のことです。特に現代のように各家に風呂があるのが当たり前ではない時代ですから、公共スペースとしての銭湯ではマナーを重視してお互いに気持ちよく過ごしたいという気持ちも強かったことでしょう。次の項目では江戸の銭湯で重視されたマナーを紹介しましょう。

知らない人にも声を掛け合う配慮があった

江戸時代には現代のように電気は無く、照明に使う油やろうそくなども非常に高価なものでした。そのため当時の銭湯では十分な灯りがあったわけではなく、夜はかなり暗い状態で入っていたと思われています。そのため、ぶつかったり、他人に水やお湯がかかったりする可能性も高く、見ず知らずの人にも声を掛け合うことが一般的でした。もっとも、灯りが少ない中で、湯気もあったわけですから、知り合いがいたとしても判別するのは難しかったのかもしれませんが…。

そんなわけで、お互いに嫌な思いをしないために、湯船に入る時には「冷えた体で入ってきてすいませんね」、といった意味合いで、「冷者でござ~い」、「田舎者でござ~い」などの掛け声があったそうです。また、「お先へ」、「お早い」、「おゆるり」、「お静かに」などの掛け声もしばしば使われていたそうで、周囲への配慮が非常に重要視されていたことが伺われます。

現代でも洗い場などで隣に座る時には声をかけるくらいはあるかもしれませんが、湯船に入る時に先にいる人全員に声をかけると言うのは驚きの習慣ですね。

銭湯は娯楽や社交の場でもあった

銭湯の二階は娯楽と社交のスペース

時期にもよりますが、銭湯の二階が別料金を払って入る娯楽スペースだったこともあるそうです。脱衣場からハシゴで二階に上がると、お茶を飲んだりお菓子を食べたり、囲碁や将棋をさしながら会話を楽しむスペースが広がっていました。

二階スペースを利用するのは男性だけに限られていたようですが、これにはある時期に「湯女(ゆな)」と呼ばれる女性スタッフが三味線などで男性をもてなしたこと、武士が刀を置くスペースが必要だったことなどが関係しているようです。

三助や湯女などのサービススタッフも登場

「三助(さんすけ)」というのは銭湯の男性スタッフで、別料金で女性客の背中を流すこともありました。女性が入浴している姿を見ることができるので、男性にとってはあこがれの職業という側面もあったようです。

風呂を焚いたり、掃除をしたりと実際には肉体労働的側面もあったとはいえ、きびきびと働く三助には客からの祝儀がふるまわれることもありました。さらに外観の良さとサービスの上手さがあれば、女性にもモテたそうです。イケメンで運動神経が良く、器用な男性がもてはやされるのは昔も今も同じですね。

男性スタッフである三助とは別に、ある時代には「湯女(ゆな)」という女性スタッフも存在しました。夕方銭湯が閉店するまでは客の垢をこすったり髪を洗ったりする役割を担っていましたが、閉店後は銭湯の二階で三味線を弾いて宴席を盛り上げる一方、遊女としての業務もあったそうです。

湯女人気全盛のころには、幕府公認の遊郭である吉原がさびれるほどだったと言いますから、人気の湯女がいることで銭湯が繁盛するということもあったでしょう。ただし風紀が乱れるという理由から、1657年以降は幕府によって全面的に湯女を置くことを禁止されています。

前の項目で書いた銭湯の二階で囲碁や将棋をさすスペースになったのは、これ以降が多いようです。

まとめ

江戸時代の銭湯を取り巻く分化についてまとめました。湯女の存在が廃止されて以降の銭湯は今に至るまで、大人も子どもも気楽に使える憩いの場所です。これを機会に銭湯巡りなどしてみてはいかがでしょうか?

東京の江戸川区には現在もたくさんの銭湯が存在しており、江戸川区浴場組合に加盟している銭湯は2019年7月現在で35箇所以上もあります。わずか数百円で下町ならではの風情や開放的な入浴を楽しむことができます。自宅のお風呂では味わえない、解放感や雰囲気をぜひ堪能してみてください。

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